築30年以上を経過した木造住宅をお持ちのかたは「建物はもう価値がないから売却するとしたら土地だけの値段になる」
と思っている方がほとんどだと思います。
それは不動産業界の悪習も少なからず影響しております。
不動産業界の利益の作り方は
①安く仕入れて高く売る
➁仲介手数料ビジネス
大きくこの2パターンです。
①安く仕入れて高く売る
で多いのは例えば、
築40年のマンションで内装は一度もリフォームをしていない物件を買い取って、
リフォームをしたうえで再販売
買取価格:2,000万円
リフォーム:500万円
売却価格:3,100万円
⇒利益:600万円
こういったビジネスモデルです。
➁仲介手数料ビジネス
については
自宅を買う・売る時に不動産仲介会社にお願いして仲介手数料を払うという一番馴染みのあるビジネスモデルです。
そうなった時に①➁どちらのパターンでも
「不動産を所有している人が、自分の保有している不動産の古いから建物価値はゼロだ」
と思ってくれているほうが都合が良いのです。
①のパターンであれば建物価値がなければないほど安く仕入れられます。
➁のパターンであれば売主の売りたい希望価格を低く設定できればできるほど手間が省けます。
➁については以前のブログで書いておりますが
仲介手数料ビジネスですと
A:3,000万円で販売期間1カ月で売れる
B:3,300万円で販売期間6カ月で売れる
ですとAのほうが良いです。
仲介手数料ですと
A:96万円(税抜)
B:105万円(税抜)
とBのほうが入金額は大きいですが、
Bのほうが経費、人件費がかかってます。
例えばSUUMOで1物件を掲載する費用は【1.5万円/月】かかります。
⇒5カ月多く販売している時点でBのほうが経費が7.5万円多くかかっています。
そして販売期間が長ければその分、人件費(内覧に立ち会う営業マンの人件費や定期報告にかける人件費等)がかかります。
つまり不動産会社の利益は
A:3,000万円で1カ月で売れた場合
96万円(仲介手数料)ー1.5万円(SUUMO掲載1か月分)ー1x(1か月分の人件費)
=94.5万円ー1x
B:3,300万円で6カ月で売れた場合
105万円(仲介手数料)ー9.0万円(SUUMO掲載6か月分)ー6x(6か月分の人件費)
=96.0万円ー6x
となります。
94.5-1x > 96.0-6x
5x > 1.5
x > 0.3(万円)
計算上、販売にかける1カ月の人件費が3千円よりかかる場合
Aのほうが不動産会社は儲かることになります。
(東京都の最低賃金が1,000円/1hを超えるので、月に3時間という計算になります。)
内覧の立会で1時間、物件までの移動で往復1時間だとして1件の内覧立会で既に2時間を要します。
そうなると月に1物件に対してかける時間が3時間以下というのはまず不可能であり、
不動産会社からすると➁の仲介手数料ビジネスの場合
安い値段で早く売れた方が粗利が大きいということになります。
ですのでそもそも建物価値はゼロだと思っていてくれているお客様にわざわざ
「いや、税制面で価値はゼロだとしても建物分も少しは価値を見出せますよ」といったことはしないのですし、
数百万円高く売却できたところで不動産仲介会社からしたらメリットはほとんどないのです。
ただ実際は築30年を超えていても、建物価値をきちんと評価した値段で売れるケースもあります。
もちろんこれには
・日々大切に使っていてメンテナンスも行っている
・リフォームが施されている
などの条件が必要にはなりますが。
例えば、
車の世界ですと当然新車が一番高いですが、
クラシックカーというジャンルがあります。
不動産の場合、土地価値と建物価値の合計が値段となり
減価償却していくのは建物のほうになるので価値はゼロにはなりませんが、
車の場合、減価償却する要素しかありません。
木造住宅の法定耐用年数が22年に対し、
普通自動車の法定耐用年数は6年です。
クラシックカーの基準としては1975年までに生産された車と定義されているので、
最低でも生産から48年以上は経過している車ということになります。
⇒法定耐用年数の8倍です。
法定耐用年数の8倍を経過した車が安くない値段で取引されているのが
クラシックカーというジャンルなのです。
仮に木造住宅でクラシックカーと同じことが成り立つとしたら、
法定耐用年数22年の8倍=176年、築176年の住宅が建物価値を評価されて売買されることになります。
もちろんクラシックカーには”もう生産されていない”という希少性も含まれていますが、
同じようなことが住宅業界でもあって良いはずですし、徐々に起こりつつあります。
ちなみに
日本に現存する最古の木造ホテルである豊平館は1880年築です。
草津温泉の有名宿「奈良屋」は1954年築で築68年の木造です。
きちんとお金を使ってメンテナンスをしていれば築30年以上でも価値のある住宅として使えるのが事実です。
ただ買主にそう思ってもらうには、窓口となる営業マンにそれなりの知識がないといけないです。
大前提としてリフォームに関する知識があること
(基本的には次買う方がリフォームを施して価値を加えることになるので)
そして融資の斡旋ができるかどうか
(木造で築30年を超えてきますと住宅の担保評価の関係で融資が使いずらくなってきます)
そういった物件の取り扱い経験があり、魅力を伝えられるか
です。
弊社ではリフォームをすればまだまだ住めるような住宅を売却するのを得意にしており
ぜひそういった不動産の売却をお考えであればご相談いただきたいです。
齋藤